<千畳敷の雪崩考察について> 2021年12月17日松野作成 中央アルプス千畳敷カールは雪崩の巣窟として知られているところ(雪上訓練には適している。) 1 本年、2021年3月14日8:40頃に千畳敷カール八丁坂で雪崩が発生  1名が完全埋没し雪崩ビーコンで位置を特定し生存救出され負傷となった。  この雪崩の直前の3月12から13日にかけて低気圧が発生しており標高の高い山岳地帯では降雪があった。また、天気図の等高線から北西の風が推定されたところ。したがって、山岳域では地吹雪により吹き溜まりができ、積雪の状況が不安定であった様子。 2 千畳敷カールの特徴  地形図から判るように、カール全体が降雪により吹き溜まりになるような形となっている。  カール内の谷筋の上部露岩している下から積雪が始まり傾斜角度のキツイところは雪はたまらなく、その下の緩くなっているところに積雪量が多くなることから雪が崩れる。 3 雪崩れの要因  要因は様々であるが、雪量の多い面の上部または下部に負荷がかかる(横切ったりする)と亀裂が入りそれが誘因となり雪崩ることがある。  また、傾斜のある雪面の状況を常に観察して歩くとコロコロ雪などの前兆が見受けられることもあるので参考にされたい。 4 カール内で弱層テスト  弱層テストは度々行い、融解した痕跡のザラメ雪、降雪小粒子のしまり雪など、雪崩の要因となる層の深さを確認し降雪状況を想定するが、斜面により状況が異なる。  これは、場所により降雪時間帯とその時の風向き、太陽光の日射時間のズレ、など状況が少しずつ異なることから違いができる。  したがって、テストした状況から行動域を想定することとなるので注意が必要となる。 5 八丁坂の登行する際の冬期登山ルート  宝剣岳の東斜面を避ける様に千畳敷カールを通過し八丁坂の登行となるが、降雪中、降雪直後の先行者が無く積雪が膝程度あるときは注意が必要となる。 (下部で左面雪崩があったときはデブリ(雪の塊)が見受けられる。) 6 雪崩で埋没したときの注意  雪崩で埋没が始まると、身体の上下がわからなく真っ暗になり、直後に一瞬で雪が締まる。 この雪が締まる直前にもがいて脱出するか、肺呼吸ができる胸の空間がないとすぐに肺呼吸ができなく窒息する。 7 雪崩ビーコンとスコップ  雪崩ビーコンとスコップを使用し最短で20分で発見できることが必要、ビーコンが無ければ発見は難しくなる。 また、スコップが無ければ掘る時間が大幅にかかる。  傾斜のある膝以上の積雪域の侵入は、ビーコンを持たない、また、持っていても使い方を知らない場合は、ハイリスクな危険行為と考える。 ハイリスクな地帯へ侵入しないことが望ましい。